注81. オフショア生産

1970年代の中頃、日本製製品との競争に負け始めた米国製品を生産・販売していた米国企業では、その敗因の分析を行いました。その分析結果から、米国内の知識人からは、日米の労働コストの差が注目され、米国製品の生産コストの低減が問題とされました。米国企業では、その生産コスト低減に焦点を当て、労働コストが低い東南アジア諸国に生産拠点を移転する案が検討されるようになりました。その結果、1980年代に入って、インドネシアなどの諸国へ製品生産拠点を移す、「オフショア生産」が実施されるようになりました。

オフショア生産では、国際間での先進国と、人件費の低い開発途上国との垂直分業によって、労働コストの影響が大きな工場での製造工程を海外(開発途上国)の企業に委託し、製品の企画や設計と、販売を市場のある、先進国である米国内で実施するやり方を採用します。このオフショア生産によって、米国産の製品は、米国市場での価格競争力を回復しました。この傾向を読み取った日本企業も、米国企業と同じように、生産拠点を東南アジア等へ移転する例が増えました。

2010年ごろから、オフショア生産で、工場の運営を学んだ東南アジア諸国の企業は、先進諸国からの製品生産を受注して生産するだけでなく、独自開発した製品を先進諸国の市場へ直接投入するようになりました。つまり、先進諸国に残ったのは、製品企画と販売だけになりつつあります。

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